優しい犯罪




「…美味しい」






ここには、私が経験していないことばかりがある。


常に新しさが目の前にあって、何にも怯える必要はない。




でもいつかあの家に帰らないと。





「あのさ」




そうやって切り出されるたび、捨てられると勘違いして萎縮する。



このおじさんは、他人だから。


私が用無しになれば、情をかけることなく切り捨てる日がやってくるかもしれない。


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