優しい犯罪




大きなソファに縮こまって膝を抱えていると、少し前まで過ごしていた物置部屋を思い出した。




暗くて寒い部屋に一人、防寒具もなく異臭のする場所で過ごしていた私。


自分の服を嗅がなくても部屋の匂いはまだ残っていて、一週間に一回は入らせてもらっていたお風呂に早く入りたいと思うと同時に、そのお風呂が昨日だったことを思い出した。





「お風呂入りたい…。でも家に帰りたくない」


「お風呂?入って良いよ。俺ん家で良ければ」


「…おじさん!まだ起きるの早いんじゃないですか?」


「うん。でも目が覚めちゃって。お茶も飲みたいしトイレも行きたいし…で、起きた。あんたもお茶飲む?」




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