貴方とは、もう御免。
いつだっただろう。
もう莉緒も、中学生に上がった頃かな。
その頃から喧嘩すらもしなくなっていた。
会話はまだ、かろうじてあった気がする。

そんな時だった。
いつも通り、リビングに投げ捨ててある
夫のシャツを拾い上げたら
嗅いだ事のない女物の甘ったるい香水の匂いがした。

一瞬、ドキッとした。

今まで夫は仕事の電話でもプライベートの電話でも
必ず私の前で取っていた。
だけどいつからか着信がなる度に外に出る。
朝帰りどころか外泊も増え始めた頃、
1度だけ画面が見えた事があった。

結衣 の文字。

聞いた事のない名前。


一人の女性としてはもう愛されていない事は分かってた
私も一人の男の人として愛してはいなかったし。

こんな夫婦関係にさせてしまったのは
私にも勿論非がある訳だ。
自分勝手だけどそれでもね、
大好きだった愛していた彼に
一人の女性として愛してもらえなくなったのが
たまらなく辛かった。

それでもお互いに家族の一員として大切だったし愛していた。


最初こそは他の女の影にもがき苦しんだけど
でももうそんな気持ちも、
家族としての尊敬と愛さえも、
いつの日か完璧に無くなっていった。
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