【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
 鈍い痛みが、背中を襲った。

 しばらくして、耳に届くのは慌ただしい声と、甲高い悲鳴。

「テレジアさま!」

 近くにいたメイドが私のほうに駆け寄ってきて、身体を起こしてくれる。

 幸いにも頭は打っていないと思うので、そこまで心配するようなことはない……と、思う。

(足首は、痛いけれど……)

 でも、抵抗するときに少し踏ん張った所為だろうか。足首に確かな痛みがある。

 顔を上げれば、階段の上でコルネリアさまが口元を押さえ、震えていた。

(コルネリア、さま……)

 彼女を見つめていると、遠くから「テレジア!」という声が聞こえてくる。

 この声は、間違えるはずがない。ラインヴァルトさまのものだ。

「テレジア! 大丈夫か!?」

 ラインヴァルトさまが、私の側に跪いてそう問いかけてこられる。

 その目には、確かな不安の色が宿っている。だから、私はこくんと首を縦に振った。

「大したことではありません。……なので、大丈夫です」
「……大したことだろう」

 彼が私の背中に手を添えて、そうおっしゃる。

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