【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
「コルネリア嬢、お前、なにをした」

 地を這うような低い声で、ラインヴァルトさまが問いかける。いや、問いかけなんて優しいものじゃない。

 これは一種の、尋問だろう。

「私は、なにもしておりませんわ。彼女が、勝手に落ちただけ、ですからっ……!」

 ラインヴァルトさまから必死に視線を逸らして、コルネリアさまがそう言葉を紡ぐ。

「そ、そもそも、私が突き飛ばしたとして、なんの問題がありますの? だって、彼女は私と殿下の間を引き裂いたのですよ!?」

 彼女が自らの身体を抱きしめて、そう言葉を発する。……ラインヴァルトさまのお顔は、怖くて私でも見れなかった。

「大体、私が殿下の妃になるはずでしたのに。……こんな、突然現れたような女に――」
「――コルネリア嬢。言い訳は、必要ない」

 そのお声は、何処までも低い。怒りを隠しもせずに、ふんだんに散りばめたようなお声。

 彼は、近くにいた従者に目配せを送る。

「この女を連行しろ。しばらくの間、自宅謹慎にしておけ」

 そのままそう指示を出された彼を見て、私は咄嗟に「あ、あの!」と口を挟む。

 お二人の視線が、私に集中する。

「その、コルネリアさまだけが悪いのでは、ありません、から……」

 震える声で、言葉を紡いだ。ラインヴァルトさまが、怪訝そうな表情を浮かべられている。

 彼の視線が、私を射貫く。心臓が、大きく音を鳴らした。
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