【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
「ほら、首に腕を回して」
「え、あ、はい……」
彼のほうはずっと平常だから、私が間違えているのではないかと思ってしまう。
その所為で、私は考えることを放棄して彼の首に腕を回す。……ほんの少し、身体が熱い。
「お前らは、さっさと持ち場に戻れ。あと、誰かコルネリア嬢を邸宅まで送ってやれ」
「はい!」
ラインヴァルトさまの指示を聞いて、使用人たちがてきぱきと動き始める。
一人の従者がコルネリアさまに声をかける。彼女は、ちらりと私に視線を向けた。
「……偽善者」
ぽつりと呟かれた言葉。……が、その言葉に覇気はない。
「……ごめんなさい」
それから、少し間をおいて零された謝罪の言葉。私は、頷く。
彼女が私とラインヴァルトさまの側を通り抜けるとき。不意に、彼女が私になにかを呟いた。
「――王妃殿下には、気を付けて」
まるで、忠告のようだった。いや、間違いなく忠告だったのだろう。
ただ、このときの私はそれを深くは考えなかった。胸の奥底では、モヤモヤが募っていたのに。
でも、私は――信じたかった、のだと思う。王妃殿下のことを。
「え、あ、はい……」
彼のほうはずっと平常だから、私が間違えているのではないかと思ってしまう。
その所為で、私は考えることを放棄して彼の首に腕を回す。……ほんの少し、身体が熱い。
「お前らは、さっさと持ち場に戻れ。あと、誰かコルネリア嬢を邸宅まで送ってやれ」
「はい!」
ラインヴァルトさまの指示を聞いて、使用人たちがてきぱきと動き始める。
一人の従者がコルネリアさまに声をかける。彼女は、ちらりと私に視線を向けた。
「……偽善者」
ぽつりと呟かれた言葉。……が、その言葉に覇気はない。
「……ごめんなさい」
それから、少し間をおいて零された謝罪の言葉。私は、頷く。
彼女が私とラインヴァルトさまの側を通り抜けるとき。不意に、彼女が私になにかを呟いた。
「――王妃殿下には、気を付けて」
まるで、忠告のようだった。いや、間違いなく忠告だったのだろう。
ただ、このときの私はそれを深くは考えなかった。胸の奥底では、モヤモヤが募っていたのに。
でも、私は――信じたかった、のだと思う。王妃殿下のことを。