【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
「放してください!」

 どうして、こんなことをされなくちゃならないのか。

 彼が私の腰に腕を回す。……気持ち悪い。そう思って、彼を突き飛ばそうと、したのに。

「きゃぁあっ!」

 近くから、女性の悲鳴が聞こえて来た。驚いて、私はそちらに視線を向ける。

 そこには王城に仕えている侍女がいた。彼女の胸元には、王妃付きであるという証になるバッチ。

 そして、その侍女は私のほうを凝視していて、その指が私とゲオルグさまを指している。

 ……嫌な予感が、頭と心に浮かぶ。

(ま、って……)

 この状態は、見方によっては私とゲオルグさまが密会しているみたいだった。

 彼女はわなわなと唇を震わせる。それは、明らかに怒りからだった。

「テレジアさまが、そんなふしだらなお方だと、思いもしませんでしたわ!」

 侍女が大きな声で、そう叫ぶ。その所為で、周囲に人が集まってくる。

 私の背中に、嫌な汗が伝った。

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