【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
 けど、なんだろうか。

(お世辞だとしても、褒められるのは悪くない、かも……)

 お父さまもお母さまも、家庭教師でさえも。私のことを褒めてくださらなかった。ゲオルグさまなんて論外だし。

 だから、ラインヴァルト殿下のお言葉がたとえお世辞だったとしても、嬉しくてたまらない。舞い上がってしまいそうだった。

「なに、言ってんだ」

 そんな私を見てか、ラインヴァルト殿下が眉を顰められた。

 ……思いあがってしまったのが、バレてしまったのか。

 一瞬そう思ってヒヤッとする私に、ラインヴァルト殿下は笑いかけてくださる。

「俺は本気だよ。……テレジア嬢の笑った顔は、とても可愛い」
「っ!」

 ラインヴァルト殿下のそのお言葉が、胸に突き刺さる。でも、それよりも。

(ふんわりと笑われたラインヴァルト殿下、すごく、すごくかっこいい……!)

 この世のものとは思えないほどに、美しいお人だった。

 笑み一つで、この世界をキラキラとさせることが出来るんじゃないか。そう思ってしまうほどに、ラインヴァルト殿下を見ていると、全てがどうでもよくなってくる。

 ……全然、どうでもよくないけど。私が置かれた状況が崖っぷちであることに、変わりはないけれど。

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