【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
一人で王妃殿下の執務室の前に来て、ノックしようと手を伸ばして、引くのを繰り返す。
胸の中には相変わらず不安とか、恐ろしさとかが渦巻いている。が、こうなってしまった以上きっちりと自分の言葉で説明をしなければ……。
その一心で、私は扉をノックする。しばらくして「どうぞ」という女性の声が聞こえて来た。
扉を開けて、深々と頭を下げる。
「失礼いたします」
挨拶をすれば、王妃殿下付きの女官にお部屋の奥へと入るようにと促された。
なので、私は一歩一歩足を踏み出す。王妃殿下は、こちらに背を向けていて、表情が読み取れない。
「……王妃、殿下」
震える声で彼女のことを呼ぶ。すると、彼女がゆっくりとこちらを向く。
「二人きりにして頂戴」
王妃殿下は静かな声でそうおっしゃって、数名の侍女と先ほどの女官を追い出された。
これで、正真正銘二人きりだ。私の唇が、微かに震えた。
「その、今回のことは……」
「――えぇ、しっかりと聞いています」
私の言葉は、ほかでもない王妃殿下によって遮られた。
「まさか、あなたが元婚約者と通じていたなんてね」
「……あの」
「全く。これだけ目をかけていたのに、裏切られてしまったわ」
彼女が肩をすくめて、私を見つめる。その目には、愛なんて宿っていない。ただひたすら、冷たい色が宿っているだけだ。
……背中が、ぞくっとした。
胸の中には相変わらず不安とか、恐ろしさとかが渦巻いている。が、こうなってしまった以上きっちりと自分の言葉で説明をしなければ……。
その一心で、私は扉をノックする。しばらくして「どうぞ」という女性の声が聞こえて来た。
扉を開けて、深々と頭を下げる。
「失礼いたします」
挨拶をすれば、王妃殿下付きの女官にお部屋の奥へと入るようにと促された。
なので、私は一歩一歩足を踏み出す。王妃殿下は、こちらに背を向けていて、表情が読み取れない。
「……王妃、殿下」
震える声で彼女のことを呼ぶ。すると、彼女がゆっくりとこちらを向く。
「二人きりにして頂戴」
王妃殿下は静かな声でそうおっしゃって、数名の侍女と先ほどの女官を追い出された。
これで、正真正銘二人きりだ。私の唇が、微かに震えた。
「その、今回のことは……」
「――えぇ、しっかりと聞いています」
私の言葉は、ほかでもない王妃殿下によって遮られた。
「まさか、あなたが元婚約者と通じていたなんてね」
「……あの」
「全く。これだけ目をかけていたのに、裏切られてしまったわ」
彼女が肩をすくめて、私を見つめる。その目には、愛なんて宿っていない。ただひたすら、冷たい色が宿っているだけだ。
……背中が、ぞくっとした。