【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
「次期王太子妃には、ラインヴァルトの妃には。あなたは相応しくないわ」

 かつかつと音を立てて、王妃殿下がこちらに近づいてこられる。

 私のすぐそばで立ち止まった彼女は、私のことを見下ろす。高いヒールを履かれている所為か、いつもよりもずっと迫力があった。

「あなたには、王太子妃に。いずれは王妃になる覚悟がなかったのですね」

 バカにしたような声だと思った。……けど、ここで引いちゃいけない。

 私は、ラインヴァルトさまに自分の気持ちを伝えるのだから。

「違います! 私とゲオルグさまは――」

 ――無関係なのです。

 そう言おうとした。でも、言えなかった。

「っつ」

 その代わりとばかりに、頬に走る痛み。

 ジンジンとした痛みを感じて、現実に戻る。

 顔を上げれば、王妃殿下は閉じた扇を持っていらっしゃった。

「お黙りなさい」

 あぁ、たたかれたんだ。

 私は瞬時に、それを悟った。
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