【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
「……好きとか、そういうのはどうでもいいのよ」
「……あの」
「肝心なのは、あなたが男と会っていたということだけ。そんな尻軽に王太子妃になってもらったら、困るのよ」
「しっ……!」

 そんなの、ひどすぎる。

 だって、私は……。

「あなたは、ラインヴァルトの輝かしい未来の邪魔になるの」
「……じゃ、ま」
「えぇ、そうよ。あなたの所為でラインヴァルトが王太子の立場を失ったら、どう責任が取れるの?」

 そのお言葉に、反論が出来なかった。

 だって、そうなったら私には責任なんて取れないもの。

「だから、さっさと出て行って頂戴。もちろん、ラインヴァルトに会うのは禁止。あの子に余計なことを吹き込まれたら、困るもの」
 肩をすくめて王妃殿下がそうおっしゃった。

 ……もう、なにも返せなかった。

「与えていたお部屋の片づけをなさい。五日を目途に、出て行ってもらうわ」

 返事は出来ない。肯定の返事も、否定の返事も出来なかった。

 ただ、その場で頭を下げて王妃殿下の執務室を飛び出すのが精いっぱいだった。

 そして、執務室を出ると先ほどの女官がいて。彼女は眼鏡をくいっと上げて、私を見つめる。

「お部屋まで、お送りさせていただきます。また、王妃さまの指示で、あなたには監視をつけます」
「……監視」
「はい。王太子殿下に不用意に近づかないよう、監視させていただきます」

 女官が抑揚のない声で、そう言う。

 ……なんだろうか。まるで、犯罪者みたいじゃないか。

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