【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
 けど、そう思ったところで。

 今の私には、どうすることもできない。

 それに、そんな不確定なことを口にすることも許されない。だって、相手は王妃殿下――ラインヴァルトさまの、お母さまなのよ? 不敬罪に問われてしまう。

(今は、ぐっと我慢しなくちゃ……)

 とはいっても、いつまで我慢すればいいのか。それは、定かじゃない。

 少なくとも、私が出て行くまでの猶予は五日しかない。その間に、なんとか出来ないだろうか。

(だけど、私みたいな小娘が、どうこう出来る問題じゃないわ……)

 それに、ラインヴァルトさまは最近お忙しくされている。合わせ、彼との接触を禁じられているのだ。

 私には監視もつけられるみたいだし……。

(もう、無理なのかもしれないわ……)

 そう思ったら、胸の中に募るのは諦めの感情。

 正直、諦めたくない。ラインヴァルトさまに「私も好き」と伝えるまで、諦めたくない。

 かといって……私なんかにどうすることが出来るというのだろうか?

「王妃さまからのご命令で、世話役は取り上げます。また、外から鍵をかけさせていただきますので、ご了承くださいませ」

 女官はそう言うけれど、私の了承なんて必要ないだろうに。

 心の中でそう思っていれば、女官が部屋の扉を開けて、私を押し込む。鍵がかけられる音、それからチェーンかなにかをつけるような音が耳に届いた。

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