【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
(気のせい?)

 そんな風に思っても、またからんと音が聞こえてきた。

 このお部屋の窓が面しているところは、夕方を過ぎると滅多に人が通らない。だから、人為的なものではないと思うのだけれど。

 しばらくして、またからんと音が聞こえてきた。

 そのため、私は慌ててそちらに近づいた。音を殺して、カーテンを開ける。もしも、外にいる王妃殿下の手のかかった使用人に見つかったら、面倒だもの。

「……テレジアさま!」

 カーテンを開ければ、そこにはミーナがいた。

 驚いて目を見開けば、彼女はほっと息を吐きだす。

「よかったです。無事で……!」
「え、えぇ、私は、無事よ。ミーナのほうは?」
「私も、特には」

 彼女の言葉にほっと胸を撫でおろした。……でも、どうしてこんなところにいるのだろうか?

「ねぇ、ミーナ」
「……申し訳ございません、テレジアさま。あまり、時間がございません」

 ミーナが周囲をきょろきょろと見渡しつつ、私に折りたたんだ紙を差し出す。

 私は静かにそれを受け取った。

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