【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
 一応ここら辺を書いていく。一枚の便箋では、どうしても綴れる文字に限界がある。

 ……けど、大体のことは綴れたと思う。

「これを……どう、すればいいのかしら?」

 文字がびっちりと埋まった便箋を見つめて、私は小さくそう呟いた。

 ……ミーナは、最後に名前を書けばいいと言っていたけれど。

(ううん、ミーナを疑うわけじゃないもの。……書きましょう)

 最後に『テレジア』と文字を綴って、折りたたむ。一応格子から出られるサイズまで折りたたむと、手紙が淡く光り始めた。

「……わぁ」

 その手紙はきれいな蝶の形になって、格子から出て行く。

 ……そっか。そういう、魔法がかかっていたのね。

「移動魔法の一種、なのよね」

 こういう魔法は、一度人の手で道を教えなくちゃならない。

 そうしないと、上手く機能しないから。ミーナがここに運んできたのは、そういう意味もあったのだろう。

「どうか、ラインヴァルトさまに伝えてね」

 便箋で出来た蝶に向かって、私はそう伝えた。

 ……蝶が見えなくなって、私は一旦息を吐いた。

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