【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
 翌日。私は王妃殿下に呼び出され、彼女の執務室に向かっていた。

 私のそばを歩くのは、王妃殿下の専属侍女、それから女官。……彼女たちが付いているのは私が逃げないように、見張っているという意味も含まれているのだろう。

(なんというか、やっぱり罪人扱いだわ……)

 心が痛まないといえば、嘘になる。だけど、私は負けたくない。負けないように頑張ると決めている。

 だから、不思議と怖くはなかった。もちろん、悲しいことは悲しいのだけれど。

(大丈夫。ラインヴァルトさまも頑張ってくださっているのだもの)

 自分自身にそう言い聞かせて、私は王妃殿下の執務室の扉をノックする。しばらくして、室内から返事が聞こえてくる。

 震える手でドアを開ける。……室内には、王妃殿下がいらっしゃる。彼女は私の姿を見て、忌々しいとばかりに表情を歪められた。

「全く、厚顔無恥とはこのことだわ。この期間の意味を、考えなかったの?」

 この期間の意味。私も、薄々は感じ取っていた。

 王妃殿下が私に時間を与えたのは、自ら出ていくと口にさせるためだったのだ。そうすれば、角が立たないから。

「……考えました。ですが、このまま勘違いされたまま終わるのは、嫌なのです」

 震える手を握って、私は王妃殿下と向き合う。彼女は手に持っていた扇をパチンと音を鳴らして閉じる。その後、大きくため息をつかれた。
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