【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
「……万が一、そうだったとして、それがなにになるの?」

 どこか冷たさをはらんだ声で、王妃殿下はそう吐き捨てられた。

「真実の愛? そんなもの、この世に必要ないわ。愛がお金になるの? 愛が権力になるの? 愛しているから、愛しているから……なんて、夢を見るのもいい加減になさい!」

 彼女が声を荒げる。その様子にはそばにいた侍女や女官も、ひるんでいた。

「愛なんてあっても、宝石は買えない。ドレスを仕立てることはできない。お腹も満たせない。……そんなもの、この世に必要ないでしょうに」

 王妃殿下の視線が斜め下を向く。あふれんばかりの色気をまとったそのお姿。……同性の私でも、見惚れてしまう。

「いいこと? この世に必要なのは、お金と権力。それさえあれば、なんとでもなるのよ」
「……そう、だったとしたら」

 王妃殿下のそのお言葉は、本心なのかがわからない。ただ、本心ではないことを願う。

 だって、彼女のその気持ちが正しいのならば。

 ――彼女にとって、ラインヴァルトさまはなんなのだろうか。そう、思ってしまうから。
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