【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
(王妃殿下は、ラインヴァルトさまを自身が権力を手に入れる道具としか、見ていらっしゃらないのだわ……)

 気が付いてしまって、なんとも言えない感情が浮かび上がってくる。

 ……あのお人は素晴らしいお人だ。努力だってされているし、王太子として頑張っていらっしゃる。

 少ししか一緒にいない私がなにかを言うのは筋違いかもしれない。……でも、違うんだ。

「ラインヴァルトさまは、あなたさまのために生きているんじゃないんです……!」

 わなわなと震える唇を必死に動かして、そう告げる。

 王妃殿下は一瞬だけぽかんとされたものの、すぐにけらけらと笑い始めた。

 その様子は、なんだろうか。侍女や女官たちも驚くような。多分、彼女が日常的に見せてはいない表情なのだろう。

「馬鹿なことを。……あの子にそれ以外の価値があるとお思いなの? せっかく後ろ盾になるであろう娘も用意したのに……」

 その『娘』とは間違いなくコルネリアさまのことだ。

 王妃殿下は、ラインヴァルトさまだけじゃない。コルネリアさまのことも利用しようとされていたのだ。

「それが、なに? こんなどこにでもいそうな女を選んで、家だって後ろ盾になれるほど強い家でもない。挙句、婚約破棄を告げられたという瑕疵つき。次期王妃にふさわしいわけがないわ!」

 確かにそれはすべて正しい。私の家には強い権力があるわけでもない。婚約だって解消されたという瑕疵がある。いわば、傷物の令嬢だ。

 だけど。
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