【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
「けど、私はラインヴァルトさまが好きなのです。……あのお人を、愛しているんです……!」

 それは恥ずかしくてたまらない言葉だった。が、今言わなくちゃ。その一心で、震える唇で言葉を紡ぐ。

「私は、あのお人と一緒にいたい。……その気持ちには、偽りがないのです……!」

 本当だったら、一番にラインヴァルトさまに告げるべきだったのだろう。わかる。

 ただ、今はこう言わなくちゃならないような気がした。

「……あなたの気持ちは、よーくわかりました」
「王妃、殿下」
「あなたが、二人の男を手玉に取る悪女だということが、とてもよくわかったわ」

 二人の男……。

「しかも、相手はともに高貴な身分。……どういう手を使ったのか、ぜひともご教授願いたいわ」

 明らかに馬鹿にしたような言葉。

 そこに今までの王妃殿下はいない。……ここにいるのは、権力を欲する悪女……なんだろうな。

「あなたの元婚約者も。ラインヴァルトも。……とても、可哀想」

 これでは話にはならない。

 それを悟って、私はどうにか頭を動かす。なんとか、彼女の余裕を崩さなくちゃ……。

(なにか、策はないの……?)

 ぎゅっと下唇をかむ。そのとき。王妃殿下の執務室の扉が開いた。

「……母上」
「……ラインヴァルト」

 そこには、ラインヴァルトさまがいらっしゃった。彼は、今までにないほどに怒りを帯びた表情をされている。

 ……怖い。

 そう思った。しかし、私を見る彼の目は優しいままだったから。……あぁ、大丈夫なんだって思った。
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