【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
 彼女のその叫びに、私の肩がびくんと跳ねた。

 ……確かに彼女には恩がある。それは、認める。

(けど、裏切られたのは私のほうだわ……)

 彼女を信頼していた。その気持ちは、私の中に未だあるのに。

 私はただただ邪魔だと思われていて、ずっと陥れる機会を狙われていたのだ。

 実の両親に愛されてこなかった。だから、彼女を実の母親のように慕っていた……はず、なのに。

(なんだろう。……もう、なにも気持ちがわかない)

 目の前にいる女性は、一体だれなのだろうか?

 私が慕っていた王妃殿下では、ない。むしろ、他人の空似だって言われたほうがずっとしっくりと来る。

 ……そう、合ってほしいと思ってしまった。

「あなたはそこまでして王太子妃の座が、次期王妃の立場が欲しいのね! ラインヴァルト、目を覚ましなさい。その女は、とんでもない悪魔だわ!」

 王妃殿下がラインヴァルトさまに手を伸ばす。……彼は、その手を迷いなくはたき落とされていた。

「悪魔はあなただ。……あなたは、どれだけ他者を愚弄すれば気が済むんだ」
「……ラインヴァルト?」
「言っておくが、あなたが愚弄し、めちゃくちゃにしたのはテレジアだけじゃない。そこにいるゲオルグのことも、コルネリア嬢のことも。馬鹿にし、愚弄してきたんだぞ」
< 156 / 175 >

この作品をシェア

pagetop