【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
(ど、どどど、どういうこと!?)

 私はどうして、ラインヴァルト殿下に手首を掴まれているのだろうか。

 意味がわからなくて、混乱してしまう。……掴まれた手首が、熱いような気がするのは気のせいじゃない……と、思う。

 混乱して、目が回るような感覚だった。

「テレジア嬢、少し、真剣な話がある」

 さらには、ラインヴァルト殿下が真剣な面持ちでそう告げてこられるものだから。

 頭の中が真っ白になる。ゲオルグさまに婚約の破棄を告げられたときの比ではない。今のほうが、ずっとずーっと混乱している。

「ひゃっ、ひゃい……!」

 その所為で、上ずった変な声が漏れた。

 自分の発した声が耳に届いて、たまらなく恥ずかしくなる。

 視線をそっと逸らせば、ラインヴァルト殿下が私の手首を掴む手に力を込められる。

 ……逃がさないという意思が、ひしひしと伝わってくるようだった。

「あんたは、今、フリーなんだよな?」
「……あ、あの」

 フリーって、どういう意味……?

 目をぱちぱちとさせてそう視線で問いかければ、彼は「婚約者や恋人がいないっていう意味だ」と教えてくださる。

 ……婚約者、恋人。

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