【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
(だったら、ラインヴァルトさまには誰にも文句をつけられない女性と一緒になってほしい……)

 それが、私の望みだった。

「……相応しい、か」
「は、い」
「俺に相応しいのはテレジアだ」

 ……意味がわからなくて、ぽかんとする。

 彼がおもむろに私の手を取る。それから、上着のポケットからなにかを取り出した。

「これは、まぁ、いわば玩具みたいなもんだけど。……とりあえず、着けるな」

 ぽかんとする私を他所に、ラインヴァルトさまがその『なにか』を私の指に通す。

 そこにあるのは、シンプルなシルバーのリングだった。

「……あの、これ」

 目を瞬かせて、彼を見つめる。私の視線を感じた彼は、ちょっと照れくさそうに頬を掻いていた。

「婚約指輪……は、また別に用意する。これはただのプレゼントだ」

 その割には、しっかりと薬指に嵌っているのはどうしてなのか。絶対、逃がさないっていう強い意思を感じる。

 ……あぁ、そうだ。ラインヴァルトさまは、そういうお人だった。

「なんですか、それ……」

 私の口から出た声には、涙が混じっていたと思う。

「プレゼントなのに、薬指にはめるんですか……」

 軽く嗚咽を漏らしながら、私は抗議の色を宿した言葉をぶつける。ラインヴァルトさまは、大きく頷かれていた。

「だって、逃がさないためだし」
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