【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
 彼のその態度には、悪びれた様子なんてない。

 さも当然という風にそうおっしゃる彼は、やっぱり私の好きな人なんだって理解する。

「……で、どうする?」

 彼が私の手を見つめて、そう問いかけてこられる。ほんの少しの不安を孕んだような声に、私はどうすればいいかわからなくなる。

 ……本当は、ラインヴァルトさまと一緒にいたい。でも、どうするのが正解なのか。

(正解とか、間違いとか。そういうことでは、ないのよね……)

 これは、私がどうしたいかの問題なのだろう。

 それを理解して、私はシルバーのリングを撫でてみる。シンプルだけれど、高価なんだろうなと感じさせてくる。

 ……ラインヴァルトさまは、玩具みたいなものとおっしゃっていた。そんなわけ、ないのに。

「テレジアが嫌だったら、俺はもう止めない。……ただ、俺はテレジアと一緒に居たい」

 彼は強引なのに。どうしてか、私の意思を尊重してくださる。

 そういうところも好き……なの、かな。

(最後に私にすべてを委ねるところが、本当に彼らしい気がするわ……)

 目を伏せて、もう一度シルバーのリングを撫でる。
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