【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
 そして、顔を上げた。彼としっかりと視線が交わる。私は、震える唇を開いた。

「わ、たし。……ラインヴァルトさまのお隣にいても、いいですか?」

 瑕疵ばっかりあるような令嬢なのに。図々しくも、私はそう思ってしまう。

 彼に縋るような目を向けて、返答を待つ。彼が少し考え込んだような素振りを見せて、にんまりと笑われた。

「別に、いてもいい。……むしろ、いないんだったら……そうだな」
「……はい」
「俺が、テレジアを追いかけるか」

 冗談めかしたような言葉だった。……でも、私にはわかる。

 彼は割と本気でそう思っていると。

「なにもかも投げ出して、俺はテレジアを追いかける。……テレジアとだったら、辺鄙なところでも楽しそうだしな」
「……なんですか、それ」

 そういうの、あんまりよくないと思う。

 私がそう言おうとすると、ラインヴァルトさまが私の手を取った。指を絡められて、ぎゅっと握られる。

「だから、テレジアはいわば鎖みたいなものなんだろうな」
「……鎖、ですか?」
「あぁ、俺にすべてを投げ出させないための鎖」
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