【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
 つまり、私がいないとダメということなのか。

 ……そうじゃないとわかっていても、そういう風にイメージ出来る言葉は嬉しい。

「私、その……あんまり、器用じゃないです」

 小さくそう言葉を紡いだ。

「愛想だってよくないし、なにも出来ないし、容姿もあんまりよくないし。……ラインヴァルトさまのお隣にいていい人種じゃない」
「……そうか」
「でも、あなたさまのお側にいたい。それだけは、心の底からの気持ちで――」

 私の言葉は、最後まで続かない。彼に身体を引き寄せられて、抱きしめられてしまったから。

 目を瞬かせて、私は戸惑う。

「それだけでいい。……それに、自虐の言葉は俺が上塗りしてやる。自虐するよりも、自信を抱けるように」
「……はい」
「好きだよ、テレジア」

 彼が私の頬を撫でて、はっきりとそう告げてくださって。

 ……もう、拒否する気も起きなかった。だから、私は彼の衣服をぎゅっと握る。

「ラインヴァルト、さま……」
「……ん」

 私の声を聞いた彼が、私の唇に口づけてこられる。

 ふわっとした風が花々と木々を揺らしている。その音を聞きながら、私はラインヴァルトさまに身を委ねる。

 彼の体温と香りに、包まれていてこの世で一番幸せだった。
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