【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
「……あの」
「見たいんだろ?」

 別に、そういう意味ではないのだけれど。

 心の中でそう思いつつも、私はルビーの指輪を撫でてみる。すると、台座になにかが彫られているのがわかった。

 それを指でなぞって、少し驚いた。確認とばかりに、私はそこに彫られている『文字』を見つめた。

 ……やっぱり、間違いない。

「あの、これ、見間違いでは無ければ……」
「あぁ、そうだよ。ここにはテレジアって彫ってある」

 なんてことない風に、彼がそう教えてくださる。しかも、この感じからして、つい最近彫られたものじゃない。

 ずっと、ずっと前から彫られているものだ。

「ど、うして……」

 口から零れ出た言葉に、ラインヴァルトさまはにたりと笑われていた。

「テレジアが、好きだから」
「……え」
「ずっとずーっと、テレジアが好きだったから。俺は、ここにテレジアって彫ってもらったんだ。――留学する前に」
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