【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
 私は彼の顔をぽかんと見つめる。……冗談なんて言っている様子はない。

「それに、俺がルビーを好いているのは、テレジアの目みたいだからなんだよ」

 彼はそうおっしゃって、私の頬に手を当てられる。そのままするりと撫でられて、もう意味が分からなくなる。

 ……私の目は、赤い。確かに見方によってはルビーみたいかもしれない。

「だから、俺にとってルビーはテレジアそのものみたいなものだった」
「……ラインヴァルト、さま」

 もうどう返せばいいかがわからない。私は彼をぼうっと見つめて、彼は真剣な眼差しで私を見つめる。

 沈黙が場を支配する。気まずくて視線を逸らすと、彼がふっと口元を緩めた。

「ずっと、ずっと好きだった。……留学したのだって、テレジアのためだ」
「……わ、たしの」
「あぁ。父上に留学すれば好きな令嬢を娶っていいと言われた。ま、一定の成績はキープするようにと念押しされたけどな」

 彼が私の頬を撫で続ける。拒否することも出来なくて、私はやっぱり彼を見つめる。

「……テレジアがゲオルグの奴と婚約したことに関しては、本当に嫌だった。だって、あのゲオルグだぞ? 碌な目に遭わないのは容易に想像が出来たんだ」
「は、い」
「ラッキーだったのは、俺が手を出すよりも先に、テレジアとの婚約を解消してくれたことだ。……やっとテレジアを手に入れることが出来る。そう思ったんだ」

 そのお言葉にごくりと息を呑む。彼に優しいまなざしに、心臓がとくとくと早足になる。
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