【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
「……本当、そういう目が最高に可愛い。……なぁ、この後時間あるか?」

 彼にそう問いかけられて、静かに頷く。今日はこの後、お休みの予定だ。

「そっか。……じゃあ、部屋に戻ったら存分に愛でられるな」
「そ、そういうの、やめてくださいっ……!」

 なんだろうか。彼はすぐに私に触れたがる。

 まだ婚前だから……とか、そう言ってのらりくらりと逃れてはいるのだ。ただ、私自身も彼を求めているような気がして。

 いつか、あっさりと陥落してしまうのではないか。

 そういう恐れを抱いている。

「だ、だって、私たちまだ婚前で――」

 顔を手で覆ってそう告げれば、ラインヴァルトさまは喉を鳴らして笑われていた。

 ……からかわれていたのだと、悟る。

「テレジアってなに想像したの? 俺は愛でるって言っただけなのに」
「う、う」

 だって、そうじゃないか。それもこれも、ラインヴァルトさまが悪い。

 私がこういう思考回路になってしまったのも、全部全部このお人の所為だ。
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