【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
「……どう、すればいいの」

 小さくそう呟いて、目を伏せる。

 周囲の喧騒が遠のいていくような感覚だった。まるで、私一人だけがこの世界から切り離されたような。

 どうしようもない、感覚。

 目を瞑れば、お父さまの無の表情。お母さまの失望したような表情。お兄さまの呆れたような表情が、浮かんでくる。

「私、本当に期待外れなんだわ……」

 小さくそう呟いて、ぎゅっと手を握る。

 物語の中ならば、ここで誰かが助けてくれるんだろう。……かといって、ここはそういう物語の世界じゃない。

 だから、私は――このまま、自然と忘れられていく。誰の目にも留まらない雑草のように、消えていくんだ。

 そう、思っていたときだった。

「大丈夫か?」

 誰かが、私に手を差し出して、そう声をかけてくれた。

 驚いて顔を上げる。……そこには、美しい銀髪の貴公子が、いらっしゃった。
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