【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
「……な、にいって」
「ラインヴァルトさまには、コルネリアさまがいらっしゃるではありませんか!」

 我慢できなかった。

 ラインヴァルトさまに吐き捨てるようにそう叫んで、私はまた涙を拭う。零れて、溢れて、止まってくれない涙。

「コルネリアさまのほうが、ラインヴァルトさまにお似合いです。彼女は、周囲に認められている」

 対して、私はどうだろうか。周囲から白い目で見られて、明らかに歓迎されていないムード。

 ……そりゃそうだ。一度婚約破棄された娘が王太子妃に……なんて、図々しいことこの上ない。

「私じゃ、あなたのお側にはいられない。……だから、どうか。私のことは、もう放っておいてください」

 消え入りそうな声で、そう告げる。

 ……本当は、彼のお側にいたい。

 その気持ちはあっても、それだけじゃ出来ない。やっていられない。

「テレジア」
「私、もう実家に戻ります。今まで、おいてくださりありがとうございました」

 ペコリと頭を下げて、早口にそう言葉を紡いで。

 ラインヴァルトさまのお隣を通り抜けようとして――彼に、腕を掴まれて引き寄せられる。

 ぽすんと彼の胸に、鼻がぶつかる。驚いて顔を上げれば、私のことを見下ろすラインヴァルトさまが、いらっしゃる。

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