【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
 その目は、真剣そのものだった。合わせ、何処となく怒られているような気もする。

「なんで、俺の意見を聞いてくれない」
「そ、れは……」

 後ろめたくて、視線を逸らした。

 彼はお優しいから。絶対に、私を傷つける言葉はおっしゃらない。

 私は、彼のそういうところに必ず甘えてしまうだろう。それが、わかっていたから。

「俺は、テレジアだけが好きなんだよ。……わかるか?」

 彼が私の背中に腕を回して、ぎゅっと抱きしめてそう伝えてくる。

 腕が震えていて、彼の不安を嫌と言うほどに伝えてきた。

「わ、わか、ら、ない……です」

 でも、信じられなくて。首をゆるゆると横に振れば、彼は少し困ったような表情を浮かべた。

 かと思えば、ふっと口元を緩める。

「わからないんだったら、何度でも言う。……俺が好きなのは、テレジアだけだ」

 今度は、はっきりと、しっかりと。まるで、かみしめるように言葉を告げられた。

 ……驚いて、目を瞬かせる。どう、いう。

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