【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
「あいつはは、所詮はただの幼馴染だ。本当に腐れ縁」

 そんなの、信じられるわけがない。そう言おうとしたのに。言えなかった。

 彼が、あまりにも真剣な目をしているから。

「こういう風に触れたいって思うのも、テレジアだけだ」

 そうおっしゃったラインヴァルトさまは、流れるような動きで私の頭のてっぺんに口づけてくる。

 一瞬で、ぶわっと私の顔に熱が溜まった。

「本当は唇に口づけたい。……でも、今はそういうときじゃないだろ」
「は、はい……」

 恥ずかしくて、俯いて、頷く。ラインヴァルトさまは、声を上げて笑っていた。

「なんだろ、テレジアって、本当に可愛い」
「そ、そんなの……」

 こんな醜い感情を抱く女が、可愛いわけがない。

 そう思う私の気持ちは、どうやら彼には筒抜けだったらしい。彼は、「優しいな」と私に声をかけてくださった。

「テレジアは、他者を傷つけたくないんだよな。……だから、自分を責める」
「……そ、れは」
「けど、俺は嫉妬してくれて嬉しかった。……それは、真実だから」
「し、っと、なんて……」

 これは嫉妬じゃない。

 そう言おうとした。けれど、やっぱりこれは嫉妬なのだろう。

 彼の側にさも当然のようにいられる、コルネリアさまに対しての――。

「気持ちは、しっかりとぶつけ合おうな。片方だけが我慢するなんて、平等じゃない」
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