捨てられ令嬢ですが、一途な隠れ美形の竜騎士さまに底なしの愛を注がれています。
第1話
思えば、私の人生というものは。
大体、他者に奪われているのではないか。それに気が付いたのは、愚かなことに二十歳を迎えてからだった。
「彼女を責めないでくれ。……俺は、彼女が好きなんだ」
「……はぁ?」
自分の口から漏れたとは思えないほどに、間抜けな声だった。
私の目の前に膝をつき、私を見上げる婚約者の男。彼を強く睨みつけ、見下ろす。
彼はびくっと肩を一瞬だけ揺らすものの、すぐに側にいた女性に視線を向ける。
つられるように私も彼女に視線を向ける。が、「メリーナ」という男の声に引き戻された。
「責めるなら、俺を責めてくれ。彼女は、なにも悪くない」
そう言う彼に、若干どころかかなり腹が立った。
だって、そうじゃないか。私と彼の婚約は社交界の中では常識で、彼女も貴族なのだ。……知らないなんて言い訳が通じるわけがない。
「いいえ! 元はと言えば、アードリアンさまに惹かれてしまった私が悪いのです……!」
婚約者――アードリアンさまに縋りつく、女。いや、この場合は浮気相手というべきなのか。
まぁ、そんな彼女は私を上目遣いで見つめる。目にたっぷりの涙をためた姿は、庇護欲をそそる。その証拠に、アードリアンさまは彼女に「キミは悪くない」と声をかけていた。
(……口角上がってるわよ)
だけど、私は彼女の口角がほんの少し上がっていることに気が付いていた。
でも、指摘する元気なんてない。だから、露骨にため息をついてアードリアンさまの前で仁王立ちをした。
大体、他者に奪われているのではないか。それに気が付いたのは、愚かなことに二十歳を迎えてからだった。
「彼女を責めないでくれ。……俺は、彼女が好きなんだ」
「……はぁ?」
自分の口から漏れたとは思えないほどに、間抜けな声だった。
私の目の前に膝をつき、私を見上げる婚約者の男。彼を強く睨みつけ、見下ろす。
彼はびくっと肩を一瞬だけ揺らすものの、すぐに側にいた女性に視線を向ける。
つられるように私も彼女に視線を向ける。が、「メリーナ」という男の声に引き戻された。
「責めるなら、俺を責めてくれ。彼女は、なにも悪くない」
そう言う彼に、若干どころかかなり腹が立った。
だって、そうじゃないか。私と彼の婚約は社交界の中では常識で、彼女も貴族なのだ。……知らないなんて言い訳が通じるわけがない。
「いいえ! 元はと言えば、アードリアンさまに惹かれてしまった私が悪いのです……!」
婚約者――アードリアンさまに縋りつく、女。いや、この場合は浮気相手というべきなのか。
まぁ、そんな彼女は私を上目遣いで見つめる。目にたっぷりの涙をためた姿は、庇護欲をそそる。その証拠に、アードリアンさまは彼女に「キミは悪くない」と声をかけていた。
(……口角上がってるわよ)
だけど、私は彼女の口角がほんの少し上がっていることに気が付いていた。
でも、指摘する元気なんてない。だから、露骨にため息をついてアードリアンさまの前で仁王立ちをした。