捨てられ令嬢ですが、一途な隠れ美形の竜騎士さまに底なしの愛を注がれています。
「じゃあ、なに? あなたさまが償いでもしてくれるっていうの?」
「そ、それは……」

 彼が視線を逸らす。……あぁ、これは。償うつもりなんてないんだ。

 それに気が付いて、私はまた「はぁ」とため息をついた。それを見たためなのか、アードリアンさまが俯いて震えた。

「だ、大体、メリーナが悪いんじゃないか! キミには可愛げというものがない! そんなキミと一緒にいると、息が詰まるんだよ!」

 バンっと床をたたいて、アードリアンさまがそう叫ぶ。

 一瞬だけ虚を突かれた。けれど、すぐに頭の中にじわじわとした怒りがこみあげてきた。

 ぐっと息を呑んで、私は膝をつくアードリアンさまに視線を合わせるように、しゃがみこむ。

「息が詰まる? 私だって、あんたみたいな男と一緒にいるのは、息が詰まっていたわよ」
「……っ」
「そもそも、この世の中可愛げのある女ばっかりだって思わないことね」

 死ぬほど負けず嫌い。そのうえで反発心の強い私。そんな私が『可愛くない女』であるということは、よく知っている。合わせ、そんな女が嫌われるということも、知っている。

 かといって。私の性格がそう簡単に変わるわけじゃない。

 才能とか、愛らしい性格とか。そういうものはないから、その分努力で補おうとしていた。……無駄、だったけど。

 そう思って肩をすくめる私を見て、アードリアンさまが強く唇をかむ。

 その後、私をびしっと指さした。

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