捨てられ令嬢ですが、一途な隠れ美形の竜騎士さまに底なしの愛を注がれています。
「……そう、ですね。企みといえば、企みか」

 彼が肩をすくめたのがわかった。

 それから、彼が「メリーナさん」と私の名前を呼ぶ。……そういえば、私、彼に名乗ったっけ……?

(まぁ、多分がっつり飲んでたうちに名乗ったんだろうなぁ)

 でも、深くは考えず、彼に顔を向ける。……ヴィリバルトさんと真正面から見つめ合う形になって、ドキドキとした。彼の顔は、見えないけれど。

「俺、あなたの好みが知りたいんです。食べ物とか、飲み物とか。デザインとか、色とか」
「は、はぁ……」
「……あとは、そう、ですね。好きな人のタイプ……とか」

 その言葉の後、ほんの少しの沈黙が走る。

 今、聞き間違いじゃなかったらこの人は「好きな人のタイプ」って言ったような気がする。

(き、気のせいでしょ……?)

 頭の中がパンクするみたいな感覚だった。

 ついでに……身体がふらっとしてしまう。

「メリーナさん!」

 倒れこむよりも先に、ヴィリバルトさんが私の身体を支えてくれた。その手が、見た目に似合わずたくましくて胸がきゅんとする。
 だけど、それよりも。

「……頭、痛い」

 これは絶対に飲みすぎだ。それを悟るほどの頭痛と気分の悪さに襲われて……私は、その場で意識を失った。
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