ねぇ君は恋をしたことがある?

知りたい感情

「ありがと。」

初めて会話した言葉であり、最後に会話した言葉である。

ねぇ、君は恋をしたことがある?

ーーーー。

「まじか。、」

小学校のあの一言からまったく話してこなかったやつと高校になって、隣の席になった。中学でもなかなか話す機会もなくて、知り合い程度…いや、知り合いの部類に入るか分からない程度の仲である。

私はいままでいい人間関係を築いてきた。

男女関係なく、クラスの中で目立つ人物ほどではないが、クラスの全員と話せる仲であり、人から相談を受けることだって少なくはなかった。だが、私には、とあることが欠けていた。それは、「恋愛」である。

困ったのは中学時代、恋愛相談をされたときだった。

私には、恋をすることの楽しさがわからない。人に対しての愛おしさがわからなかった。家族への愛情は十分に分かるのだが、それとこれとでは、種類が違うのだ。

彼に触れたい、話したい、苦しい、楽しい、さまざまで、私が抱く家族への愛情とは別なのだと理解した。

だから私は高校生活で恋愛を知ることを目標にすることにしたのだ。

隣となった椿直人つばきなおとくん。

彼に好意を抱いていた人は数多くいた。

中学時代よく、耳に挟む名前であった。

が、その誰もが私なんかが恐れ多い、見てるだけで幸せと告白しようとはしなかった。

特定の人としか話せない橘くんはある意味話しかけづらい人ともなっていたのである。

この人なら、恋愛を知ることができるかもしれない。

みんなが抱く、愛おしさを私も知りたい。

小説で読んでも、ドラマを観ても、わからなかった感情を理解したい。

「よろしくね、椿くん。」

「よろしく。」

そんな思いで私の高校生活は幕を開けた。
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