イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない


 “ 俺にふさわしい ” って、一体なんだ?


 父は、一堂グループと肩を並べるほどの大企業社長の娘である母と、政略結婚をしたらしいけど。


 俺にまで、それを求めないで欲しい。


 父に歯向かいたいけど、それは無理だ。


 この家では、父の言うことは絶対だし。


 これでも俺は、曽祖父の代から続く会社を初めて海外進出させ、更に大きく築き上げた父のことを尊敬しているから。


 悔しいけど、中学2年生だったこのときは、ただ大人しく頷くことしかできなかった。


 それから程なくして俺は、バスケ部を退部。


 学校の廊下の窓から、依茉の姿を見ることもなくなった。


 好きなものを同時に失い、心にぽっかりと穴があいたような気分。


 でも、もう少しで完全に依茉のことを好きになるところだったから、ここで踏みとどまって良かったのかもしれない。


 もし好きな人と付き合えたとしても、どうせまた初恋のときみたいに親に別れさせられる。


 だったら、これからはもう本気で誰かを好きになることはやめようと思った。


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