イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない
このまま彼らの言いなりになるだけの人生はやっぱり嫌だと思った俺は、初めて親に反抗したくなった。
ずっと黒だった髪を派手な色に染めて、両耳にはピアスをし、学校も度々サボるようになった。
定期テストも補習もまともに受けていなかった俺は当然留年し、そして今に至る。
学校からの帰り道。依茉を車で家まで送り届けたあと、俺はリムジンの窓の外を眺めながらフッと笑う。
女を取っかえ引っ変えしたり、親に反抗したりと、こんな自分には笑えるけど。
今振り返ってみれば、高校を留年して良かったなと思う。
そうでなければ、依茉とクラスメイトになることもなかったし。
怜央に、依茉の偽の恋人になってと頼まれることもなかったのかもしれない。
「慧さま。さっきのお嬢さん……慧さまにとって、とても大切な方なのですね」
「ああ。すごく大切で……大好きな子だよ」
車を運転する寺内に尋ねられた俺は、素直に肯定する。