イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない
「なんで、唇隠すの?」
「え? 一堂くんがお礼って言うから、てっきり……」
「いくら俺でも、所構わずキスするわけないじゃない」
いや、これまで所構わずキスしていた気もするけど……今は触れないでおこう。
とりあえず、ここでキスされないのなら良かった。
安心したわたしは、唇から手を離す。
「でも……」
一堂くんはニヤリと笑うと、私の耳元に唇を寄せた。
「もし依茉がキスして欲しいのなら俺、いくらでもするけど?」
色気のある声でささやかれ、体が熱くなる。
「さぁ、依茉。どこにして欲しい? まずは、頬?」
一堂くんの手が、わたしの頬にそっと添えられる。
「ちょっ、ちょっと! さっきから教室で何を言ってるの!?」
「元はといえば、依茉が唇を隠したりするからいけないんだろ? 俺のこと、煽ってるとしか思えない」
もう! なんでそうなるのかな……。
「一堂くんがそんなことばかり言ってるのなら、わたし杏奈たちのところへ行くから」
わたしは、自分の席から立ち上がる。