イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない


 長い手が伸びてきたかと思うと、彼の指が口元に触れた。


「ケチャップ、ついてたよ」

「……っ」


 くすっと笑いながら、わたしの口元から取ったそれをペロッと舐める一堂くん。


 ケチャップがついていたなんて、恥ずかしい……!


 頬が熱くなるのを感じたわたしは、たまらず顔を伏せた。


「依茉も、良かったらパスタ食べる?」


 一堂くんが、フォークにスパゲティをクルクルと巻きつけ、わたしに差し出してくる。


 ま、まさか、食べさせてくれるなんて。


「はい、依茉ちゃん。口開けて? これも美味しいよ?」

「……っ」


 そんなキラキラの笑顔で言われたら、断れそうもない。


 照れくささから少し躊躇したわたしだけど、ようやく彼のフォークを口に含んだ。


 濃厚なカルボナーラのコクのある味わいが、口の中に広がる。


「……美味しい」

「だろ? 依茉のもひとくち、もらっていい?」


 それからわたしたちはひとくちずつ互いに食べさせ合い、食後にはカフェラテを飲んで、外でのランチを楽しんだ。


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