イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない
◇遠足
一堂くんとデートをした日の夜。
この日、看護師をしているお母さんは夜勤のため、わたしはお兄ちゃんと二人で自宅のダイニングで夕食をとっていた。
「うん。やっぱり依茉の作ってくれるご飯は、美味いなぁ」
わたしの向かいに座るお兄ちゃんが、エビフライを上機嫌に頬張る。
「ところで、依茉。今日、慧とショッピングモールにいた?」
「ぶっ!」
お兄ちゃんに聞かれたわたしは、飲んでいた味噌汁を吹き出しそうになってしまう。
お兄ちゃんは、ショッピングモールの中にあるお店でアルバイトをしているんだけど。
まさか、一堂くんと一緒にいるところをお兄ちゃんに見られていたなんて……。
ここは誤魔化したりせずに、正直に白状しよう。
「うん。いたよ」
「へぇ。慧とは、別に付き合うフリだけでいいのに。二人で出かけたりとかしてるんだな」
お兄ちゃんの顔が曇る。
「まさかとは思うけど、依茉……」
「はっ、はい」
お兄ちゃんの声がいつもよりも低くて、わたしの背筋がピンと伸びる。
「慧からハグとかキスとか、何も変なことはされてないだろうな?」
お兄ちゃんに聞かれて、心臓がドキッと大きく跳ねる。
「えっと……」
やばいやばい。ハグどころか、キスももう何度もされてるよ……!