イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない


「依茉、手痛くない?」

「かすり傷程度だから、大丈夫だよ」

「ちょっと手、見せて」


 一堂くんに言われてわたしが怪我をした左手を差し出すと、一堂くんが患部に絆創膏を貼ってくれた。


「念の為に、先生から絆創膏をもらって持ってきてて良かったよ。とりあえず、簡単な処置だけ」

「一堂くん、ありがとう」

「ううん」


 一堂くんが、わたしに優しく微笑む。


「あの……ごめんね、一堂くん。この前もらったキーホルダーのネコの部分を、どこかに落としちゃって」

「もしかして、そのために怪我して危ない目に遭ったの? あんなの、またいくらでも取ってあげるのに」

「“ あんなの ” じゃないよ。あのとき初めて一堂くんが取ってくれたあの白ネコは、この世にたったひとつしかない大切なものだから」

「ありがとう。依茉がそんなふうに思ってくれてたなんて、嬉しいよ。でも、もう一人で無理だけはしないで。もし依茉に何かあったら、俺の心臓いくつあっても足りないから」


 一堂くんがおでこを、コツンとわたしのものに当ててくる。


 心配かけてしまったんだな。


「分かったよ。本当にごめんね」

「みんな心配してるから。そろそろ山頂まで行こうか」


 くっつけていたおでこを離すと、一堂くんがわたしに手を差し出してくる。


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