イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない
一堂くんがわたしを見つめながら、ニコリと微笑む。
でも、まさか……。ここで水をかけてしまった先輩と、今の一堂くんが同一人物だったなんて。
しかも、一堂くんが中学生の頃からわたしのことを見ていてくれたなんてびっくり。
頭の中に薄らと残る当時の一堂くんは、黒髪でピアスもつけてなくて、真面目そうな少年という印象だった。
一堂くんとちゃんと話したのは、あのときの一度きりで。学年も違ったから、申し訳ないけどほとんど記憶に残ってなくて。
公園で一堂くんに失恋現場を目撃されて爆笑されたときは、中庭で初めて話したときと彼の雰囲気が180度変わっていたから。
あの日の公園での出会いが、一堂くんとの初対面だとばかり思っていた。
「俺、今までの女関係は全て終わらせたから。もちろん、連絡先も削除した」
「もしかして、それで頬に絆創膏を……?」
「ああ。来月付き合うことになっていた一人に、平手打ちにされた」
そうだったんだ……。
わたしは、一堂くんの絆創膏を貼っているほうの頬を指でそっと撫でる。
「俺、依茉のことがほんとに好きだ。これからは、依茉一筋で生きていくから……仮の彼女ではなく、今日からは俺の本当の彼女になって欲しい」