イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない


 話って聞くと、なんとなく悪い予感しかしないんだけど。


 俺はドキドキしながら、母が口を開くのを待つ。


「あのね、実は……慧さんに、名家のご令嬢とのお見合いの話が来てるのよ」


 ……やっぱり。そういうことか。


 俺は、はぁっと大きくため息をつく。


「お相手の方は、大越(おおこし)グループのお嬢さんなんだけど。大越家は、旧財閥のお家で……」


 大越グループとは、お菓子メーカーをはじめ様々な事業を展開する大企業。


「そこの長女の方が、慧さんと同い年でね。S女学院に通っていて、美人で語学も堪能で。とっても優秀なのよ」


 そしてS女学院は、世間でも有名なお嬢様学校だ。


「お父さんも、ぜひとも慧さんの将来のお相手にって乗り気でね」


 どこの令嬢だろうと、いくら父が乗り気だろうと、俺は誰とも見合いなんてするつもりはない。


 だって俺には、依茉がいるんだから。


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