イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない


 目の前の女子は、制服を派手に着崩していて。緑色のリボンをつけてるから……2年生の先輩だ。


「なっ、何ですか?」


 突然知らない先輩に話しかけられたわたしは、訝しげな目で彼女を見てしまう。


 あれ。でも、この人前にどこかで見たことがある気がする。


 そうだ、思い出した。先月わたしが、慧くんと両想いになったあの日。


 昼休みに中庭で、慧くんに告白して彼女が振られているところを、偶然わたしが見てしまった……。


 確か、ファッション雑誌のモデルをやっているとかいう、あのときの先輩だ。


「ちょっとあなたに話があるんだけど。一緒に来てくれる?」

「話……ですか?」


 何となく嫌な予感がして、わたしは後ずさる。


「話といっても、すぐに終わるから。そんなに警戒しなくても大丈夫だよ」


 ニコリと、わたしに微笑みかける先輩。


 だけど、先輩の目はちっとも笑っていなくて。


 それが怖くて。とても断れそうにない雰囲気に、わたしはおとなしく彼女についていくしかなかった。


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