イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない
「痛……っ!」
わたしは床に尻もちをついた拍子に、右足首を捻ってしまった。
「一体どんな手を使ったのか知らないけど……西森さん、慧くんと別れてくれる?」
金髪先輩が、わたしの目の前にしゃがみこむ。
「慧くんのことを好きな子は沢山いるの。その子たちに恨まれる前に、さっさと別れたほうが身のためよ」
どこから出してるんだと思うくらい低い先輩の声に、背筋がぞくりとする。
わたしが慧くんと付き合っていることで、悲しい思いをしている人たちが大勢いるって思うと胸が苦しい。
だけど、わたしも慧くんが好きだから……やっぱり簡単には別れたくない。
こちらを鬼の形相で睨みつけてくる先輩とバチッと目が合い、思わず視線を逸らしそうになるけれど。
ここで、負けたらダメだ。
わたしは真っ直ぐ、金髪先輩のことを見据える。
「誰に何と言われようと、たとえ先輩に目をつけられようと……慧くんとは別れません! だって、わたしは慧くんのことが大好きだから」