イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない
慧くんが、わたしのことを先輩たちから守るようにしてわたしの前に立つ。
目の前の彼の背中は大きくて、とても頼もしく見える。
「よくも依茉のこと、傷つけてくれたね? 俺の大事な彼女ってだけでなく、依茉は俺の親友の妹なんだけど?」
「えっ、うそ。西森くんの!? ごっ、ごめんなさい……」
お兄ちゃんのことを知ってるのか、金髪先輩の顔は真っ青だ。
「謝るなら、俺じゃなくてちゃんと依茉に謝って」
「……っ。ごっ、ごめん、西森さん」
「本当にごめんなさい……」
金髪先輩だけでなく、モデルの先輩やもう一人の先輩も次々とわたしに謝罪する。
「もしまた依茉にこんなことをしたら……次は相手が女だろうと、絶対に許さないから」
「はっ、はい……」
蚊の鳴くような声で言うと、先輩たちは逃げるように足早に非常階段を降りて行った。
「ほんとあの子たち、逃げ足だけは早いな」
「慧くん……」
安心したのか、わたしはずっと堪えていた涙がポロポロと溢れて止まらなくなる。
「……うっう」
「怖かったな、依茉」
慧くんはわたしの前に両膝をつくと、ぎゅっとわたしを力強く抱きしめてくれる。