イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない
「け、慧くんのお母さん……!?」
なっ、なんでお母さんがここに!?
予想外の人物の登場に、わたしは目が飛び出そうになる。
「こっ、こんにちは……」
震える声で、なんとか挨拶をする。
「依茉さん。あなたに、お母さんと呼ばれる筋合いはないんだけど」
お母さんに睨まれ、肩がピクっと跳ねる。
「す、すみません……それでは、い、一堂さんと呼ばせて頂きます」
「ええ。それでいいわ」
一堂さんは軽く微笑むと、コツコツとヒールの音を響かせながらこちらへ近づいてくる。
「今日はあなたに大事なお話があって、お伺いしたのよ」
「大事なお話……ですか?」
「ええ。ここで立ち話も何だから、あそこの車で少し話しましょうか」
一堂さんが、路肩に停めてある黒塗りの高級車を指さす。
「依茉さん、いいわよね?」
「はっ、はい……」
嫌だなんてもちろん言えるわけもなく、わたしはただ頷くしかなかった。