イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない
一堂さんと、高級車の後部座席に並んで座る。
一体何を言われるのだろうとソワソワしていると、程なくして一堂さんが口を開いた。
「……依茉さん、慧のことは好き?」
「え……はい。もちろん好きです」
「そう。息子のことを好きになってもらったことは、あの子の親としては嬉しいわ。だけど……」
一堂さんの言葉が途中で止まり、わたしはゴクリと唾を飲み込む。
「依茉さん。慧と……別れてくれない?」
大事な話って、やっぱりそれしかないよね。
「慧にも、あなたと別れるように言ったんだけど……別れないの一点張りで。困ってるのよ」
はぁっと、大きくため息をつく一堂さん。
……やっぱり慧くん、お母さんにわたしと別れるように言われていたんだ。
『この先、たとえどれだけあの人たちに反対されても。どんなことがあっても……俺は、依茉のことだけは離さない』
先日の保健室での慧くんの言葉が、脳裏をよぎる。
「あの子が全く聞く耳を持たないから、この際あなたにお願いしようと思って。ねぇ、依茉さん。慧と今すぐに別れてちょうだい」