イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない
「お金は……受け取れません」
わたしは、差し出された茶封筒を一堂さんに押し返す。
「あら、いらないなんて。あなたの家は母子家庭だから、お金に困っているんじゃないの? お母さん一人じゃ大変でしょう?」
小馬鹿にしたように笑う一堂さんに、わたしは両掌をぎゅっと握りしめる。
「いえ。とにかく、わたしは慧くんと別れるつもりはないので」
それだけ言うと、わたしは車のドアに手をかける。
「言っておくけど依茉さん……これは、あなたのためでもあるのよ?」
……わたしのため?
わたしは、一堂さんのほうへと振り返る。
「一般のご家庭の依茉さんが、もし将来一堂家に嫁いだら大変よ? 英語はもちろん話せなきゃいけないし、教養だって必要。第一、家の格が違いすぎて苦労するのが目に見えている」
それは、確かにそうかもしれないけど……。
わたしは俯き、下唇を噛み締める。
「慧は、一堂グループの跡取りなの。だから、それにふさわしい人と結婚してもらわないと困るのよ。少なくともその相手は、あなたじゃない」
一堂さんのストレートな言葉が、胸にグサッと突き刺さる。