イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない
一堂さんの言葉を反芻しながら、わたしは制服のスカートの裾をきゅっと握りしめる。
慧くんのためを想うなら……どうしたら良いのかなんて、頭では分かってる。
だけど……。
保健室で、慧くんに足を手当してもらったあの日。
『この先、どんなことがあっても俺は、依茉のことだけは離さない』と言ってくれた彼に、『わたしも離れない』って言ったから。
慧くんに伝えたあの言葉が、嘘だったってことにはしたくないから。
「わたしは、慧くんのことが好きなので。これからも一緒にいたいです。大越グループのお嬢さんみたいにはなれなくても、わたしなりに勉強も頑張って、彼を支えたいと思ってます」
「ほんっと、物分りの悪い人ね……」
一堂さんに冷たい目でじっと見つめられ、ゾクッと背筋に寒気が走る。
一堂さんは慧くんと同じ、薄茶色の綺麗な目をしているのに……。
その目が、今はすごく怖い。